言い訳

お昼前に買い物から帰ると留守番電話のランプが点滅している。

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ピィィィィーッ

「あ、こちら○○高校担任の△△ですが、娘さんがまだ登校してないんですが・・・。
こちらの方に至急ご連絡頂けますでしょうか」ピィィィーッ

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

娘は朝6時半に家から出ていったではないか。今・・・もう11時である。なになに?
犯罪の臭い?ひき逃げ?通り魔?ちんどん屋さんに付いて行っちゃった???
いくら樹の股からひねり出した子とはいえ、もう心臓は大和田バクバクである。
あわてて娘の携帯に電話。

プルプル「・・・・・もしもし」「もしもし??あんた何してるん」
「え?バスに乗り遅れてなー学校まで歩いて行ったら道に迷ってん」

「・・・は?」

ここで整理をしておこう・・・・まずバスである。1本乗り遅れたら次の朝までバスが
来ないようなへんぴな所ではないのである。トトロのネコバスだって、もう少し本数は
多いであろう。まあ、学生の乗る朝のバスというのはある程度決められているので
それ以外のバスに乗るのに気が引けたのであろうと、善意の母は無理矢理納得してやろう
と思ったが、次の「道に迷った」は、モロボシ断じていけない。アンヌも怒っちゃうのだ。

娘の通う高校はサバンナの奥地やチベットの秘境、不思議なダンジョンにあるのではない。
しかもバス停から降りて一本道なのである。5歳と3歳の子どもが出演して「初めてのおつかい」
でも、ルートが簡単すぎて涙が誘えないとプロデューサーから却下されるような道である。
それをこの女は「迷った」とのたまうのである。ここで善意の母は戦意の母に早変わり。

「アンタあほちゃう?」「へらへらへら」「そんな理由、先生に言いなや。笑われるで」
「うん」「さっさと行け、ばかたれ」「はい。ごめんなさい」

結局、友達の家に居て遅刻した、というつまらない顛末なのであるが、言い訳の稚拙さに
私ははらわたが煮えくりかえった。この桂 歌丸のような母を「うむ」と唸らせる言い訳が
その母から育った娘としてなぜにいえないのか。

「あのなー交差点渡ったら火星人に襲われて、今円盤の中やねん。あ!すごいすごい。
 ほんまや!地球は青いでぇ〜おかあさん〜(泣)」

「電信柱の狭いとこ通り抜けたら江戸時代にタイムスリップしてさぁ、しかも参勤交代の行列に
出くわして「下にぃ下にぃー」って頭ずーっと上げられへんねん。まだお殿さまの駕籠が通らへん
から、だいぶとかかるなぁ、これは。」

「お忍び旅行中のフランスの王子に一目惚れされて、ただいま軟禁状態。今ごはんよばれ
 てんねんけど、ナイフとフォークって外側から使うん?それとも内側から??」

「バスやと思って飛び乗ったら『蓮』でさぁ。今、池の真ん中浮いてるし」

・・・・・・・・・・。ここまでレベルの高い言い訳が言えなくとも「道中で下駄の鼻緒が切れちゃって」
ぐらいは言えていい年頃である。くぅぅぅ〜今一度、鍛え直さねば。ということで、早く学校から次の
電話が来ないか、首を長くして待つ日々。

そして某月某日。

・・・・・・プルプルップルプルッ

「もしもし?○○高校担任の△△ですけど。あのーお嬢さんまた登校してませんよ。
 もしかして今日、遠洋マグロ漁船に乗り込むで日したか?」

あ、参った。先生の方が一枚上手だった。仕方ない正直に答えよう。

「いえ、シケで船は出ないはずですけど」


 

                                                                                                             by ちろる



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2009年 1月 18日 | Friends



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